留学経験者の声

こんにちは。僕は2013年春、大阪大学経済学部を卒業しました。三回生の秋から一年ほど、カナダ西海岸の都市バンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学(以下UBC)に交換留学をしました。そして現在はアメリカのシカゴ大学経済学部博士課程に進学し、新たな生活をはじめたところです。

ところで、みなさんは「留学」についてどんな印象を持っていますか?
●留学前から現地の言葉をペラペラ話せる人が行く
●授業についていくのが大変そう
●外国に住むのはなんとなく怖い etc…

ここでは、留学に対する一部の誤ったイメージを一新してもっと身近に感じてもらうと同時に、不自由や危険をともなう留学の現実も併せて理解してもらえればと思います。

留学に至るまで

僕が留学を考えるきっかけとなったのは外国からの留学生との交流でした。二回生になって興味本位で履修してみた英語の上級クラスで、生徒の半分以上が留学生という状況に出くわしました。同世代の彼らの話す流暢な英語や日本語、そしてユニークなものの考え方に驚き、それまでにない刺激を受けました。また同じ頃、偶然にも留学生のチューターを依頼され、海外からの学生と接する機会が増え、次第に留学に興味を持つようになりました。そんな折に開かれた留学説明会に参加してみたところ、交換留学のハードルとなるのは基本的に語学能力試験のスコアだけだとわかり、それならチャレンジしてみようと思いたちました。

さまざまな協定校のなかでUBCを留学先に選んだのは、実は前述した説明会でUBCに留学された先輩の留学体験談を聞いて惹かれた、という至って単純な理由からでした。また、アメリカと同じ北米にあるということ以外にカナダという国に対して知識やイメージがほとんどなく、好奇心に似た興味をもっていたこと、大学のあるバンクーバーは治安が良く、非常に住みやすい街として有名であったこと、そしてUBCがカナダのトップレベルの大学として評判が高かったことなどが決め手になりました。(結果的にUBCを選んで良かったとは思っていますが、他の大学で勉強した留学仲間も同じようにみな楽しそうだったので、留学場所がすべてではないことは心に留めておいてください。)

留学生活 〜英語と勉強〜

実際に留学してみて多くの人が苦労するのはやはり現地の言葉でしょう。僕も最初の一ヶ月間は授業についていくのに必死で、毎日授業が終わるとぐったりしていました。相手の言っていることがわからず、自分の言いたいことが伝えられず、しまいにはその場の雰囲気に合わせて取り繕い適当に応対する。そんな状況にフラストレーションを感じる時期が続きました。それでも学期末には最初に比べるとだいぶ聞き取りができるようになり、日常生活で話す英語にも少しずつ自信が持てるようになりました。(語学留学に比べ、現地の学生が受講している授業に最初から"放置"される交換留学では、一般に語学上達のスピードが速いと言われています。確かに必要に迫られて覚える英語は、使える英語です。)授業以外でも、ルームメイトと毎日話したり、ポットラックパーティという自分で作った食べ物を持ち寄って行うパーティに参加したり、留学生を対象としたイベントに通ったりすることで、積極的に「自分の言いたいことを英語で話す」機会を増やしたことが上達に役立ちました。そのほか、僕のいたバンクーバーには日本人が多いので、最初のうちは「日本人と日本語を使わない/話さない」ことも心がけました。(ただ、あまり無理をすると余計なストレスがたまってしまうので、適度に母国語でのガス抜きを忘れずに。)

次に、多くのみなさんが不安に思われる授業の理解と単位取得についてですが、授業は基本的に教材に沿って進んでいくので、教科書やレジュメを読んで予習や復習に取り組むようにすればそれほど大きな問題ではありません。たしかに、毎週宿題が出たり授業中の参加を求められたりするので勉強量は多く大変ですが、勉強内容に対する理解力が深くなり収穫は大きいです。実際、僕が履修した10人足らずの少人数制の授業では、毎週大量の宿題を課せられ、学期末には特定のテーマに対して学術論文を読みこんで小論文を書き、そのプレゼンを行うという学部生には非常にハードな経験をしました。そんな体験も、大学院進学を考えていた僕にとってはとても有益なトレーニングになったと思います。(ちなみに実益として、そこで書いたエッセイは大学院の出願書類として活躍してくれました。笑)

confort zoneから抜け出せ

ここで、シンガポールからの留学生である阪大の友人が教えてくれた言葉を借りて、僕が考える留学の醍醐味を一つ。

自分が慣れ親しんだ「comfort zone」を捨てる

生まれ育った環境というのは、居心地のよい場所であり、たいていのことはみな自然で当然のように思えるものでしょう。日本は、非常に安全で快適、かつ均質的な国です。夜中でも滅多に危険な目に遭うことはありませんし、時間を選ばずとも少し歩けばコンビニで欲しいものが手に入るような街がほとんどです。そしてどこを歩いても"日本人"しかいないという光景は全く不思議ではありませんし、コミュニケーションに苦労することもほとんどありません。

しかし、外国ではどうでしょうか。まず、夜中に安易に、特に一人で出歩かないというのは暗黙のルールです。今僕が住んでいるシカゴ大学の近隣には、「この通りのすぐ向こう側は治安が悪いから行かない方がいい」と警告される場所がたくさんあります。また広大な北米では、ちょっとした買い物でも車がなければ生活できません。コンビニも都市部以外にはありません。そしてそこで暮らす人々やナショナリティについても共通理解や均一性はありません。

例えばカナダには、典型的な"カナダ人"というものは存在しません。人口の大半が移民やその子供だからです。あたりを見渡すと、中国人、インド人、パキスタン人などのアジア人から、ヨーロッパ人、アフリカ人など人口構成は様々です。話しても言葉が伝わらないということはままあります。(一方で、制度上は三年暮らせば誰でも"カナダ人"になれます。約99%が"日本人"である日本では自明な、一つの国の中に住む「国民」や「民族」という概念はその実あいまいなことが多いのです。)

留学生活とは、自分の慣れない環境、見知らぬ風習の中で暮らし学ぶことです。僕も最初のうちは多くの文化的差異にとまどい、いらだつことも度々ありました。しかし、そうして常識を裏切られる経験をすることが、comfort zoneを捨てることであり、自分の世界が広がる楽しさそのものなのです。留学を終える頃には語学能力の向上だけでなく、多角的で不偏的な視点、世界中にいる友人との広いネットワーク、新しいことに挑戦する気概とそれを乗り切る根性など様々なものがあなたの生涯の宝として残るでしょう。心の糧として、時に人生の指針として、将来輝き続けるはずです。

最後に。留学にはその準備期間や留学期間すべてを含めるとおおよそ二年間、つまり大学生活の半分を要します。そして帰国して日本で就職活動を行う場合、(悪しき)長きに亘る"就活"事情のために卒業を一年遅らせる人も多いのが現実です。それでもその先にある新しい世界に飛び込みたいという人は、進んでそのリスクをとりcomfort zoneを捨てて留学にチャレンジしてほしいと思います!

〜太平洋の向こう岸で留学を志す浪速の学生たちにエールを込めて〜